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オーストラリアドルの裏話

今、豪ドルが世間の注目を集めつつあります。米ドル神話が崩れ去った現在、豪ドルの振替通貨としての人気はユーロに次ぐ勢いです。外貨預金をする際には、リスクを拡散させるために、複数通貨に投資する手法が広まりつつあります。一昔前の感覚では米ドルがなんといっても安全な通貨として世界における預金や取引で主役を努めていたわけですが、今では米ドルの安全性に深刻な疑問が投げかけられています。米経済の大不況のみならず、アメリカの安全保障政策の度重なる失敗により、軍事大国アメリカに対する信用を失われつあり、米ドル預金に安心感を得られない人が増えています。翻ってオーストラリアを眺めると、テロの危険こそあるものの、国は安定し経済的成長力も高いことから、豪ドルに対する安心感が広がっています。しかも、オーストラリアでは政府が金融政策として高金利を維持しているため、外貨預金から得られる金利は日本円の定期預金を遥かに上回ります。豪ドル人気が高い水準にあるのも頷けるというものです。

さて、そんな投資対象として注目の豪ドルですが、単純な通貨としての豪ドル札も非常に興味深いものがあります。オーストラリアで現金を両替したりATMから現地通貨を引き出した経験のある人ならご存知でしょうが、オーストラリア通貨は、プラスチックのような素材から作られています。植物性繊維紙で作られている多くの紙幣と違って、豪ドル札を折ろうとすると、綺麗に折れずにパキパキします。しかも、紙幣に形状記憶加工がなされているのか、折っても握りつぶしても、紙幣は元の形に自然と戻ろうとします。植物性繊維紙の紙幣しか経験したことのない人には極めて新鮮に感じられることでしょう。

実は、オーストラリアのドル札は、ポリマー紙幣と呼ばれ、プラスチックシート(ポリマーシート)に印刷されています。偽札対策の透かしにも日本円とは異なり、透明のフィルムが使われています。プラスチック通貨は一見するとチンケですが、実は素手で破れないほどの耐久性を兼ね備えています。ポリマー紙幣の耐用年数は、植物性繊維紙幣に比べて3~5倍も長いのです。これ程丈夫な紙幣なので、安っぽい見かけとは裏腹にポリマー紙幣の製造コストは植物性繊維紙幣を上回ります。世界には、オーストラリアの他にもプラスチック紙幣を採用している国は多数ありますが、オーストラリアに生産委託したり、オーストラリアから技術供与を受けているケースが非常に多いのです。外国がオーストラリアに大切な紙幣の生産委託をしていると聞くと驚かれる方もいるかもしれませんが、紙幣の生産委託は全く持って珍しい話ではありません。紙幣に精巧な偽造対策を施すには高度な技術が必要なため、技術力のない国は、偽札被害を恐れて、必ずしも自国生産にこだわりはしないのです。低品質の紙幣を世に送り出して偽札を大量に作られるよりは、オーストラリアのような外国に紙幣の生産委託をするというわけです。

他にも、豪ドルの特徴として、1ドル、2ドル札がないことが挙げられます。正確に言うと、昔はあったのですが廃止されたのです。今では、1ドルと2ドルの額面を持つのは硬貨だけです。硬貨には他に50セント、20セント、10セント、5セントの額面が存在します。嘗てはエリマキトカゲが記された1セント硬貨もあったのですが、これも廃止されました。オーストラリアのスーパーに行くと、1セント単位の値段表記がされている商品が沢山ありますが、これらはレジで切り上げ或いは切り捨てられます。ちなみに、硬貨としては最高価値を有している2ドルコインは、額面に似合わず非常に小さいため、ポケットなどに入れておくと紛失してしまうかもしれません。一般的にオーストラリアで使用されている硬貨については左の限りですが、他に収集型金貨として「コアラ金貨」や「ナゲット金貨」などが発行されています。オーストラリアに長い人でも、これらの金貨を目にしたことのある人は少ないと思います。

先程、オーストラリアの1セント硬貨にエリマキトカゲが記されていた話をしましたが、オーストラリア大陸の誇る特産動物が記されている通貨は旧1セント硬貨だけではありません。20セント硬貨はカモノハシ、10セント硬貨はコトドリ、5セント硬貨はハリモグラと、様々な硬貨の裏側に動物の絵柄を施されています。1ドル硬貨の裏面には様々なバージョンがありますが、最も一般的なのはカンガルーです。参考までに、最高値の2ドル硬貨の裏には、アボリジニと南十字星の絵が施されています。

歴史を振り返ると、オーストラリアは英連邦の一員としてポンド通貨圏に属していました。1966年までオーストラリアの貨幣単位はドルではなくポンドだったのです。実は、1965年時点でオーストラリアは、ポンドの次に「The Royal (ロイヤル)」なる貨幣単位に移行することを検討し印刷準備にも取り掛かっていたのですが、あまりにもセンスがなかったせいか、オーストラリアロイヤルはボツになり、アメリカ通貨等と同名のダラーが採用されました。また、1967年にオーストラリア政府は、それまでの英国ポンドに対するペッグ制を廃止し、完全にポンド通貨圏から離脱しました。